2010/04/14 『下駄で歩いた巴里 林芙美子紀行集』

『下駄で歩いた巴里 林芙美子紀行集』
(林芙美子 [著] 立松和平編、岩波書店、2003.6)I-G||169-2

 昭和のはじめ頃、帰りの旅費も持たずに単身中国からシベリア鉄道に乗りヨーロッパへ渡った、元祖バックパッカーとも言われる林芙美子の紀行集です。厳しい社会情勢をもろともしない、自由ですがすがしい筆致に読み進めるうちに著者のことを好きになってしまいました。
 旅先で出会った親切な人々、陽気な人々とのやり取りや、変な映画、旅先での何でもない日々について・・・。海外で一人、言葉はかたことでお金はないながらも、楽しく時々さびしがったりもしながら素直な旅を続けていきます。
 パリの一室で風邪で寝込みながらもらす一言「本当は悲しくなってしまって、何か考える事でいっぱいなんですよ。」(「ひとり旅の記」p.163より)や、「苦しいことは山ほどある。一切合財旅で捨て去ることにきめている」(「文学・旅・その他」p.292より)との芙美子の言葉にピンと来た人は、是非ご一読ください。
 旅を愛する人、文学を愛する人に、一押しの一冊です。