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2024/01/15 「推薦図書」さかなクンの一魚一会 まいにち夢中な人生

こども学科  岩本 健一先生 推薦

「さかなクンの一魚一会 まいにち夢中な人生」さかなクン著  

 〈紹介文〉
 さかなクンが一躍脚光を浴び世の中に知られるようになったのは、テレビ東京の 番組TVチャンピオンの「全国魚通選手権」である。全国から集まった魚に詳しい人達、水産試験場の先生などで優勝を競うというコンセプトである。

 1993年、高校2年生での初めての出場は準優勝で終わった。決勝の問題は、具のないスープを飲んで、使われている7種類の魚介類の名前をすべて答えるという、超難問だった。優勝できなかったさかなクンは本当に悔しそうだった(YouTubeで見られます)。これをバネに、次の年から毎年優勝して5連覇を達成する。その後、テレビに出演するようになる・・・。

 小学校の時は、ランドセルに何冊もの魚の図鑑を入れて、休み時間ずっと魚の絵を描いていた。でも母は、決して叱らなかった。魚を飼う水槽が、部屋に10台も置くようになり、畳が腐り床が沈んでも、母はさらに水槽を買ってくれる人だった。「母のおかげで、自分はこれまでずっと、お魚に夢中になってこれました。」とさかなクンは言う。そうだとも思うが、母はさかなクンの一途に夢中になる能力を感じ取って、その可能性の先にあるものを見たかったのだとも思う。中学生の時は、怖いヤンキーたちに絡まれたけれど、そのヤンキーたちに釣りを教えて、一日仲良く釣りをしていたという。

 さかなクンは魚に対してだけど、私たちも、何かに対して一途に夢中になることは、きっとその一途さゆえに、周りの人に助けてもらえたり、仲良くなってもらえたりするのだと、気づかされた。私も、一生をかけて夢中になれるものを見つけてみたいと思う。「途中でスーッと気持ちが冷めてしまうことがあっても、夢中になって一つのことに打ち込んだという経験は決してムダにはならない」と、さかなクンは言う。

 今からでも遅くない、何かに打ち込んでみようと思わされた一冊であった。

こども学科 岩本 健一

2023/06/20 「推薦図書」センス・オブ・ワンダー

こども学科  山岡 伊公子先生 推薦

「センス・オブ・ワンダー」

レイチェル・カーソン著 上遠恵子訳 川内倫子写真 


 

 〈紹介文〉
 作者レイチェル・カーソン(1907-1964)はアメリカのベストセラー作家であり、海洋生物学者でもある。作家としては「潮風の下で」「海辺」など美しい詩情豊かな文章が今でも多くの人々に愛されている。海洋学者としては海洋生物研究所などで研究を続け、漁業水産局に就職し政府刊行物の編集に従事する。のちに魚類・野生生物局に移り野生生物とその保護に関する情報収集を行う中で、科学と文学の融合が生まれたという。環境汚染と破壊の実態を世に先駆けて告発し、発表当時大きな反響を呼んだのは「沈黙の春」という著書であった。これは、世界中で、農薬の使用を制限する法律の制定を促し、地球環境への人々の発想を大きく変えるきっかけとなり、今も読まれ続けているロングセラーである。レイチェル・カーソンの先見の明は、現在もさらに深刻になっている様々な環境問題が証明している。

 そんな彼女の最後の著書「センス・オブ・ワンダー」には、日頃から考えていた自然への深い思いがすべて述べられている。生命の輝きそのものである地球の美しさや素晴らしさを余すところなく伝える中で、自然と関わる幼い子どもたちの豊かな感性の育ちに未来を期待して残されたメッセージと言ってもよいのではないだろうか。

 そしてこの「センス・オブ・ワンダー」には、幼児教育、保育者養成に携わる私の心に深く突き刺さる一節がある。  「子どもたちが出会う事実の一つ一つが、やがて知識や知恵を生み出す種だとしたら、さまざまな情緒や豊かな感受性は、この種子をはぐくむ肥沃な土壌です。幼い子ども時代はこの土壌を耕す時です。」

 この豊かな地球の自然が子どもたちの豊かな感性をはぐくむ上でどんな素晴らしい先生なのか思い知らされるとともに、美しい地球を未来にも残せるよう、身近なことから子どもたちとできることは何か深く考えさせられる珠玉の一冊である。

こども学科 山岡  伊公子

 

2022/02/09 「推薦図書」村上T 僕の愛したTシャツたち

〈推薦図書〉

『村上T 僕の愛したTシャツたち POPEYE BOOKS』

著者:村上春樹  出版社:マガジンハウス  (914.6||Mu)

 

 多少大袈裟(おおげさ)な感はありますが、本を読むと、次のことを感じることができます。

 

 自分ではない誰かに、世界はどのように見えているのか。

 

 いまという時代は、わざわざ本を繙(ひもと)かずとも、スマホの画面のなかで「誰か」の思うこと・感じたことの断片を知ることができます。もちろんそれもよいと思います。しかし、わずかな文字数のなかから、あるいは画像(動画)を主とするページのなかから浮かび上がってくるものは限定的でもあります。

 文字を並べ文章を創ることのプロフェッショナルが、作家です。彼らが時間と労力をかけて生み出す一冊の本は、私たちを「自分ではない誰か」の人生に誘ってくれます。

 以上のことを手軽に感じられると考え、『村上T 僕の愛したTシャツたち』を推薦図書に選びました。作者である村上春樹さんが集めたTシャツを紹介した本です。そこに描かれた文字や絵柄から感じること、それを手に入れるまでの刺激的なエピソードなどが書かれています。

 作中登場するのは、英語で「ぼくはなにしろケチャップにまでケチャップをかけちゃうんだ」と書かれた真っ赤なTシャツ、正体不明の動物(?)が描かれたTシャツ、「DMND」という謎の文字が並んだTシャツなどなど・・・。

 村上さんは、これらをどんな気持ちで集めたのでしょうか。のちのちタンスから引っ張り出して何を思うのでしょうか。この本を通して、「自分ではない誰か」の世界を少しだけ覗き見ることができそうです。

 

こども学科 講師 宇賀神 一

 

 

 

2020/10/13 「推薦図書」1995年1月・神戸

2019「1995年1月・神戸」『「阪神大震災」下の精神科医たち』

中井久夫編 みすず書房

 

この本は1995年1月17日の早朝に「阪神淡路大震災」が突然襲った当日の様子や状況を臨場感あふれる文章で克明に書かれています。自らや家族も被災する中、職場や病院で支援に奔走する人、被災し家も何かもを失って避難所で暮らす中でもそっと他者への気遣いを示す人、遠方からがれきをかきわけ数時間かけて支援に来た人、水分を含んだオリーブの木が類焼を防ぎ入院中の患者全員を救出できたことなど、このような中でこそ人と人とのつながりの底力が現れることを感じさせられます。40数名の執筆者がそれぞれの立場から執筆されていますが、安克昌という方も「被災地のカルテ」という一文を書いておられます。この時に不眠不休で働いた人ですが、この人をモデルに先日「心の傷を癒すということ」というTVドラマがNHKから放映されました。主人公を柄本祐が演じましたが、39歳という若さで癌のため逝去されたこともあり涙なしでは観ることができなかったです。

私も当時、心理士会からの要請で支援に入りました。本学に奉職したことをきっかけに、改めて震災のことも知りたく、中央区の「人と防災未来センター」を訪れました。どれほどの不安と恐怖だったか、その困難の中から復興に向けてどれほどの努力が積み重ねられたか、映像や記録で再現されています。もう25年たちましたが、風化させてはならないと思います。私達の何事もない日常がいかに多くの人びとや幸運に支えられているか、何らかの出来事、病気や事故、加齢により心の傷を受けた人にどこまで寄り添えるか、これからも自分のライフワークとしてこの書物は常に側に置きたい書物です。少しずつ読めますので、ぜひ一度読んでみてください。 推薦者:神戸教育短期大学 藤井裕子

                     2019

 

2018/12/13 「推薦図書」 ママのスマホになりたい

<推薦図書>

『ママのスマホになりたい

著者 のぶみ  出版社 WAVE出版  (E726.6||NO)

推薦文

絵本といえば、子どものためのものというイメージを持たれているかたが多いかもしれません。
しかし、この絵本は、子育て中のかたに、ぜひ読んでほしい絵本です。
スマホに夢中になって、全くふりむいてくれないお母さん、そして子どもは・・・。
これは、海外の実話をもとに作られた絵本です。実話では、お母さんだけでなく
お父さんもスマホに夢中になり、その子どもは、とても寂しい思いをしてしまいます。
そして、その子どもは、次のような作文を書きました。
“My wish is to become a smart phone. My parents love smart phone very much.”
子どもの願いが、お父さんやお母さんが夢中になって操作しているスマホになりたいなんてせつないですね。
日本でも、小さいお子さんを連れたお母さんが、子どものつぶやきに気付かず、
真剣にスマホの画面を見つめているという場面によく遭遇します。
スマホは、便利なものです。スマホから、様々な情報を得ることもできます。
しかし、時間を忘れてスマホに熱中してしまうと、子どもは、このような想いを抱くのではないでしょうか。
一度、この絵本を読んでみてください。

夙川学院短期大学 児童教育学科 講師 園田雪恵

 

2016/07/11 「推薦図書」幸せはあなたの心が決める

<推薦図書>

『幸せはあなたの心が決める』

著者 渡辺和子  出版社 PHP研究所  (198.24||Wa)

推薦文

本書は、ノートルダム清心学園理事長の渡辺和子によるエッセイ集である。著者は以前にも同じようなエッセイ集『置かれた場所で咲きなさい』(幻冬舎、2012年)を出版され、非常に多くの人に読まれ、影響を与えました。一つ一つの文章は、3-4ページの短いものですが、読者の心に響く印象深いものばかりです。

本書には、29のエッセイが載せられています。

わたしたちは普段、いろんなことで悩みます。特に人間関係に悩むのではないでしょうか。自分が嫌われているのではないか? 自分がのけ者にされているのではないか? 陰で悪口を言われているのではないか? などなどです。

そんなとき、本書を読むと、その悩みを軽くしてくれます。ちょっと自分の思いを変えることによって、悩みが軽くなり、また、解決してくれることさえあります。

そういうヒントをいろいろ示唆してくれる文章がいろいろあります。

例えば、「人を許せば自分も救われる」とか「聞きたくない意見に大切なヒントがある」とか「幸・不幸は、自分に由る」とか「受け入れがたい自分を受け入れる」とか「自分を美しくきたえる」とか「人間関係の秘訣」などといった言葉です。

とにかく、一度手にとって、読んでみてください。きっと、あなたに力や希望や癒やしを与えてくれるでしょう。

宗教主事 樋口 進

幸せはあなたの心

2016/01/25 「推薦図書」気になる子の体育

<推薦図書>

『気になる子の体育』  

著 者 阿部 利彦   出版社  学研教育みらい ( 375.492||Sh)

推薦文

本書は、体育授業でつまづく子ども、苦手な子どもに対して具体的にどうアプローチしていくかが記載されています。実際の授業に生かせる本の1つです。

現在、運動に対する二極化が進んでいます。運動をする子どもはたくさんするが、しない子どもはほとんどしなくなっています。その中で、全員が学校教育の中で受ける体育授業が最後の砦と言われています。

しかし、体育授業が運動嫌いを生み出すという背景も存在します。

そのような背景がある中で、全員が「できる」「楽しい」体育を行うには、体育が苦手な子どもに焦点をあてなければなりません。また小学校では体育授業を行う教師自身も体育に苦手意識が存在するという問題もあります。

上記のような問題から、体育授業を形成する教師・子どもたちにとってのユニバーサルデザイン化を目指していくことが重要になっています。

体育授業のユニバーサルデザイン化にヒントをもたらしてくれる本になっているので、小学校教師を目指す学生には、ぜひ読んでいただきたいと思います。

体育が苦手な子も得意な子もみんなが参加し、楽しく運動をしている姿を見ることができると、先生自身が楽しくなることと思います。また先生が楽しそうな姿を見せることで、子どもたちも楽しい気分になるのではないでしょうか。

この本を活用し、ぜひ、楽しさの連鎖を生み出しましょう。

児童教育学科  住本 純

気になる子の体育

 

2015/11/16 「推薦図書」自閉症児の困り感に寄り添う支援

<推薦図書>

『自閉症児の困り感に寄り添う支援』

著者 佐藤 曉 2007年 出版社 株式会社学習研究社 (378||Sa)

推薦文

本書では、自閉症のある子どものエピソードが記述されています。この

エピソードの読み解きについては、自閉症のある子どもとかかわってきた自身も「なるほど、そういうことだったのか」と納得です。自閉症のある子どもについての理解を深められる最適な本だとおもいます。

本書の中のあとがきから引用します。

この社会では、「言われなくても進んでする」能動性・積極性がよしとされている。もちろん、それがいけないとは言わない。しかし、一方で、そうではないことの価値も、もっと認められていい。

というのも、臨床の仕事には、受動性・消極性が求められるからである。イケイケのお節介な人は、この職業に向かない。

人はヴァリネラブルな(もろさをそなえている)他者に対して、受動的・消極的であることがとても難しい。そういう他者を前に、私たちは受け身であることに耐えきれず、ついつい「頼まれない仕事」をしてしまいがちである。ちょっと厳しい言い方なのだが、もろさを抱えた他者に自己の存在を負ってしまうのだ。クライエントに依存、というよりむしろ支配しているといってもいい。効力感に乏しく、不安が強い人ほど、そういうわなに陥りやすい。

そうではなくて、臨床という仕事は、相手が自分に語り出してくれるのを無期限に待つ、そういったきわめて受動的かつ消極的な営みなのだ。受動・消極ということばには、どことなくマイナスのイメージがあるが、決してそんなことはない。

はじめから「困り感」を口にする人は少ない。逆に、「困り感」をじょう舌に語るクライエントは、他者に依存することを実は知らないのだ。そういう相手に、この人になら自分のことを語り出しても傷つかずにすむかもしれないと思ってもらえるような、ある種の大らかさが必要なのである。

臨床家には、受動的・消極的に他者に寄り添う誠実さと、相手の求めを敏感に受け止める感性とが欠かせない。

保育者という臨床のお仕事を目指す学生さんには、ぜひ読んでいただきたいです。そして、自閉症のある子どもへの保育の参考にしていただければとおもいます。

児童教育学科 林 幹士

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2013/11/18 『植物はそこまで知っている』

『植物はそこまで知っている』
(ダニエル・チャモヴィッツ著、河出書房新社、2013.4〉471.3||Ch      
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― 「植物は、あなたを見ている。」                       
この言葉を聞いて、あなたは驚くのではないだろうか。

擬似科学本ではない。
本書は、進化論の祖であるチャールズ・ダーウィンを始め、
様々な植物学者や生物学者たちの研究に基づき、“植物の感覚”について教えてくれる。
各章に分け、「見る」・「嗅ぐ」・「聴く」といった各種感覚機能から「記憶」までが、
常に植物と動物とを対比させ、慎重に論じられている。
読み手には、特に植物学の知識などは必要とされない。
内容は専門的であるにも関わらず、文章は非常に分かりやすい。
その興味深い植物の世界を覗き込んだ者を、ぐんぐんと引き込んでいく力のある1冊だ。

果たしてあなたは知っているだろうか、植物がどこまで知っているのかを。

我々と同じように、太陽の光を浴び、風を受け、雨に打たれる植物たち。
彼らはこの世界を、どのように“感じて”いるのだろうか。
そう、その“行動”は、決して運まかせに起こされているのではない。
ぜひ本書を手にし、植物たちの未知なる能力に驚き、感動してほしい。

2013/01/16 『ベラ・チャスラフスカ 最も美しく』

『ベラ・チャスラフスカ 最も美しく』〈後藤正治著、文藝春秋、2004.7〉781.5||Go

1964年、東京オリンピックで金メダルを獲得し日本中を虜にしたチェコの女子体操選手ベラ・チャスラフスカ。
彼女の波乱に満ちた半生を中心に、彼女と同時代を生きた女子体操選手、あるいは彼女以降に登場したその時代を代表する選手の姿を描いた作品です。 (さらに…)

2013/01/11 『蜩ノ記』

『蜩ノ記』 (葉室麟著、祥伝社、2011.11) 913.6||Ha

前藩主側室と不義密通を犯したとの罪で、家譜編纂と10年後の切腹を命じられ
幽閉された元郡奉行・戸田秋谷と、家老より秋谷のもとに遣わされた
豊後・羽根藩の奥祐筆・檀野庄三郎。
庄三郎は秋谷の清廉さに触れ、その無実を信じるようになりますが……。

命を区切られても一日、一日を懸命に生きる秋谷の姿に、
忘れかけている日本のこころを思いださせられます。
全てを純白にしてくれる感動の一冊です。
<第146回 直木賞受賞>

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2013/01/11 1・2・3月のテーマ展示「二つの震災を振りかえって~私たちにできること~」

1月から3月のテーマ展示は「二つの震災を振りかえって~私たちにできること~」です。

1995年1月17日午前5時46分。巨大地震が阪神・淡路を襲いました。神戸とその周辺の街は壊滅的被害を受け、一部地域では大火災も発生しました。「阪神・淡路大震災」です。

そして、2011年3月11日午後2時46分。三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の巨大地震とそれに伴う大津波が東北地方を中心とする沿岸都市部に襲いかかり、大きな爪あとを残しました。さらに福島では東京電力福島第一原子力発電所で事故が発生しました。

災害は、いつどこにやってくるかわかりません。
時間が経つほどに記憶は風化していきますが、二つの地震を振り返って、改めて震災や防災について考えてみませんか?
以下の四つの項目ついて書かれた資料を集めてみました。

・被災・復旧の記録を知る
・リスクに備える
・支えあう
・原子力発電を考える

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2012/12/17 『ふたつの生命 後藤正治ノンフィクション集第1巻』

『ふたつの生命 後藤正治ノンフィクション集第1巻』
(後藤正治著、 ブレーンセンター、 2009.6) 916||Go||1

心臓と肺に移植でしか救われない病をもつ、若い日本人女性のドキュメントです。
心肺移植は心臓移植に比べてもドナーが少ないため、死と隣合わせで長期間待つことが余儀なくされます。

そんな彼女のもとに同じ病であるアメリカ人女性から手紙がきます。
二人とも心肺移植を待ち望み、励ましあい、そして最後まで生きることにまっすぐと向き合います。
「病室に閉じ込められている彼女と、外を自由に動き回れるわれわれとどちらがより<生きて>いるのだろうか、と。」(本書p.511あとがきより)
こう後藤先生が述べられているように、死を強く思えば思うほど、それと同じくらい、もしくはそれ以上に<生きて>いることを感じる作品です。

12/20に、後藤先生によるこの『ふたつの生命』をめぐっての公開講座が、306教室で16時40分より開催されます。
ぜひご参加ください。

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2012/11/16 『理系の子 高校生科学オリンピックの青春』

『理系の子 高校生科学オリンピックの青春』〈ジュディ・ダットン著、文藝春秋、2012.3〉 407||Du

「インテル国際学生科学フェア」、これは高校生の科学オリンピック。
世界40カ国以上から予選を勝ち抜いた高校生達が自由研究を持ち寄り、名誉をかけて戦う。
ある日突然ハンセン病と診断された少女は、この病気に屈せず自分で治そうと徹底研究を始める。
また、自閉症を持ついとこのために画期的な教育プログラムを作り出した少女や、第二のビル・ゲイツと呼ばれた少年など、研究に青春をかけた少年少女たちの実話を納めた感動の一冊。
本人のみでなく、少年少女の両親・友人・教授など周りの人たちが、どんなサポートをしたのかにも注目するとより面白くなる内容となっています。

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2012/11/15 『牙 江夏豊とその時代』

『牙 江夏豊とその時代』〈後藤正治著、講談社文庫、2005.2〉 783.7||Go

長嶋がいて、王がいて、…江夏がいた昭和40年代の日本プロ野球。
当時ドームはもちろん、人工芝もグランドにはありません。
そこにあるのは、ただ選手たちのプライドと誇りをかけた「真剣勝負」。
頁をめくるごとにグランドの土ぼこりと一緒に、選手をはじめその周囲の人々の野球に対する熱い想いが伝わってきます。

また、江夏選手が阪神タイガースに在籍していた時代は、著者である後藤先生が皆さんと同じ20代の青春の日々を、過ごした時代でもあります。

11/22に、後藤先生によるこの『牙 江夏豊とその時代』をめぐっての公開講座が、306教室で16時40分より開催されます。
ぜひ後藤先生の語りとともに、江夏選手が活躍された時代をご堪能いただければと思います。

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2012/07/06 『奇蹟の画家』

『奇蹟の画家』〈後藤正治著、講談社、2009.12〉 723.1||Go

「いささか私的な事柄からはじめてもいいであろうか。そのことがなければ、絵と出会うことも、画家に出会うことも、また絵と画家に関わった人々と出会うこともなかったわけであり、この小さな物語を書きはじめることもなかったであろうから。」(本書p.14より)

この書き出しにある「私的な事柄」とは、後藤先生が当学での教員を依頼されたことです。
そこで担当することになった「文化講座」の講義で、先生はゲストに島田誠さんを講師に招き、一枚の絵に出会います。
それは、「少女とも聖母像とも聖像画(イコン)とも映る。」(本書p.17より)石井一男さんという画家が描いた小さな肖像画でした。

本書は、その偶然出会った石井一男さんの作品をめぐる物語です。

7/19に、後藤先生によるこの『奇蹟の画家』をめぐっての公開講座が、306教室で16時40分より開催されます。
当学の講義で先生が島田さんに出会われ、皆さんに石井さんを紹介されたことも一つの奇蹟かもしれませんね。
この出会いを大切に、是非こちらの講座にもご参加下さい。

*石井一男さんの絵は、図書館でもご覧になれます。
『絵の家 石井一男画集』 (石井一男著、ギャラリー島田、2008.10) 723.1||Is

2012/04/17 『清冽 詩人茨木のり子の肖像』

『清冽 詩人茨木のり子の肖像』(後藤正治著、中央公論新社、2010.11) 911.52||Go

 「自分の感受性くらい 自分で守れ ばかものよ」

茨木のり子さんの詩、「自分の感受性くらい」の最後です。
読んで、どのように感じましたか?
怒られているような、でも励ましているような、また反省しているような。。。

「詩は文芸の領域で最上位に位置するもの」と後藤先生も本書のなかで言われており、詩は短い言葉にもかかわらず、人々のこころに与える影響は非常に大きいです。
本書は詩人の生い立ちから、「倚りかからず」や「わたしが一番きれいだったとき」などの有名な作品が生まれた背景を、丁寧に、真摯に書き綴っています。
そこには、余分な表現はなく、後藤先生の控えめな詩人に対する評価の仕方で、茨木のり子さんの人柄を浮かびあがらせています。
それにより、純粋に詩の力が伝わり、ぼんやりしていた自分の「感受性」の輪郭がはっきりするようで、身が引き締まります。

ぜひ以下にあげた本も併せて、ゆったりと読んでみてください。

*『自分の感受性くらい』 (茨木のり子著、花神社) 911.56||Ib
*『倚りかからず』 (茨木のり子著、筑摩書房) 911.56||Ib
*『詩のこころを読む』 (茨木のり子著、岩波書店) 911.5||Ib

2011/07/27 『世界の民族音楽辞典』

『世界の民族音楽辞典』(若林忠宏編著、東京堂出版、2005.9) 760||Wa *禁帯出

 音楽について知るには、聴いたり、楽器に触れたりしなくてはいけませんが、この本は「聴こう」というきっかけとしてや、実際に民族音楽を聴いてみて気になったことを調べるのにおすすめの一冊です。
 「トルコの音楽」「アンデスの音楽」などの各地域毎の音楽について分かりやすくまとめた項目と、楽器や演奏法その他用語についての項目とを五十音順で調べることができます。
 この本は、世界中の900種以上の民族楽器を演奏する音楽家でもある若林忠宏氏によって執筆されています。一人の人間がまとめたとは思えない内容の濃さに、著者の民族音楽への深い愛情を感じることができます。楽器やCDジャケットの写真も豊富で、気になる音楽や楽器がどんどん見つかってしまうかも? 世界中のまだ聴いたことのない音楽の世界へ、一歩近づいてみませんか?

2011/05/06 『ひとりたび2年生』

『ひとりたび2年生』(たかぎなおこ著 メディアファクトリー 2007.12) 291.09||Ta||2

 ずっとあこがれていて、なかなか実現できない「ひとりたび」。ましてや女の子なら不安はなおさらのこと。それでも、何処へ行くか、何をするかを自分で決めて、行動したいっ!-そんな気持ちを後押ししてくれる一冊です。
 寝台特急に乗って北海道へ、伊豆では断食デトックスに挑戦、はたまた、石垣島でウィークリーマンションを借りてたっぷり14日間滞在など、列車で船で飛行機で、日本列島を駆け巡る著者。初めて遭遇することには誰でもオロオロするもの、でもそこで学ぶこともきっと多いはず。素朴な著者の体験を見ていると、自分でも出来そう?!と勇気づけられました。
 
♪たかぎなおこさんの本は他にも所蔵がありますよ♪
○『ひとりたび1年生』 291.09||Ta||1
○『ローカル線で温泉ひとりたび』 291.09||Ta 
○『愛しのローカルごはん旅』 596.04||Ta

2010/04/14 『下駄で歩いた巴里 林芙美子紀行集』

『下駄で歩いた巴里 林芙美子紀行集』
(林芙美子 [著] 立松和平編、岩波書店、2003.6)I-G||169-2

 昭和のはじめ頃、帰りの旅費も持たずに単身中国からシベリア鉄道に乗りヨーロッパへ渡った、元祖バックパッカーとも言われる林芙美子の紀行集です。厳しい社会情勢をもろともしない、自由ですがすがしい筆致に読み進めるうちに著者のことを好きになってしまいました。
 旅先で出会った親切な人々、陽気な人々とのやり取りや、変な映画、旅先での何でもない日々について・・・。海外で一人、言葉はかたことでお金はないながらも、楽しく時々さびしがったりもしながら素直な旅を続けていきます。
 パリの一室で風邪で寝込みながらもらす一言「本当は悲しくなってしまって、何か考える事でいっぱいなんですよ。」(「ひとり旅の記」p.163より)や、「苦しいことは山ほどある。一切合財旅で捨て去ることにきめている」(「文学・旅・その他」p.292より)との芙美子の言葉にピンと来た人は、是非ご一読ください。
 旅を愛する人、文学を愛する人に、一押しの一冊です。