『不思議な少年』 (マーク・トウェイン作 中野好夫訳、岩波書店、1999.12、改版)
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学生の頃、図書館で立ったままついつい一気読みしてしまったこの本。最近また読み返してみました。
『トム・ソーヤーの冒険』などの作者として知られるマーク・トウェインの晩年のこの作品は、未完のまま遺され、編集者の手により編集され世に出ました。晩年期のペシミズムが色濃い作品とされています。
ある日町にあらわれた「サタン」という名の少年。天使であるサタンは、お金も物も自由自在に出すことが出来るし、未来も簡単に変えることができる。非常な残忍さ(?)を持ち合わせているのに、サタンに会うとみんながすてきな気分になってしまうし、会えない日が続くと、退屈な気持ちになってしまう。
人間の愚かさが嫌というほど描かれていながら、全編通して変に明るくて飄々としている、そこが、逆にそら恐ろしい。
人間の「悪」について、「良心」という認識についてぐらぐらと揺り動かされる作品です。寂しいような切ないような読後感は、サタンにどこか人間味を感じてしまったせいかもしれません。
解釈や好みは、読者によって異なりそうなこの作品。ぜひ一度自分自身の目で確かめてみてください。