推薦図書

2020年10月13日

「推薦図書」1995年1月・神戸

神戸教育短期大学

「推薦図書」1995年1月・神戸

2019「1995年1月・神戸」『「阪神大震災」下の精神科医たち』

中井久夫編 みすず書房

 

この本は1995年1月17日の早朝に「阪神淡路大震災」が突然襲った当日の様子や状況を臨場感あふれる文章で克明に書かれています。自らや家族も被災する中、職場や病院で支援に奔走する人、被災し家も何かもを失って避難所で暮らす中でもそっと他者への気遣いを示す人、遠方からがれきをかきわけ数時間かけて支援に来た人、水分を含んだオリーブの木が類焼を防ぎ入院中の患者全員を救出できたことなど、このような中でこそ人と人とのつながりの底力が現れることを感じさせられます。40数名の執筆者がそれぞれの立場から執筆されていますが、安克昌という方も「被災地のカルテ」という一文を書いておられます。この時に不眠不休で働いた人ですが、この人をモデルに先日「心の傷を癒すということ」というTVドラマがNHKから放映されました。主人公を柄本祐が演じましたが、39歳という若さで癌のため逝去されたこともあり涙なしでは観ることができなかったです。

私も当時、心理士会からの要請で支援に入りました。本学に奉職したことをきっかけに、改めて震災のことも知りたく、中央区の「人と防災未来センター」を訪れました。どれほどの不安と恐怖だったか、その困難の中から復興に向けてどれほどの努力が積み重ねられたか、映像や記録で再現されています。もう25年たちましたが、風化させてはならないと思います。私達の何事もない日常がいかに多くの人びとや幸運に支えられているか、何らかの出来事、病気や事故、加齢により心の傷を受けた人にどこまで寄り添えるか、これからも自分のライフワークとしてこの書物は常に側に置きたい書物です。少しずつ読めますので、ぜひ一度読んでみてください。 推薦者:神戸教育短期大学 藤井裕子

                     2019