こども学科 山岡 伊公子先生 推薦 「センス・オブ・ワンダー」
「センス・オブ・ワンダー」 レイチェル・カーソン著 上遠恵子訳 川内倫子写真
〈紹介文〉
作者レイチェル・カーソン(1907-1964)はアメリカのベストセラー作家であり、海洋生物学者でもある。作家としては「潮風の下で」「海辺」など美しい詩情豊かな文章が今でも多くの人々に愛されている。海洋学者としては海洋生物研究所などで研究を続け、漁業水産局に就職し政府刊行物の編集に従事する。のちに魚類・野生生物局に移り野生生物とその保護に関する情報収集を行う中で、科学と文学の融合が生まれたという。環境汚染と破壊の実態を世に先駆けて告発し、発表当時大きな反響を呼んだのは「沈黙の春」という著書であった。これは、世界中で、農薬の使用を制限する法律の制定を促し、地球環境への人々の発想を大きく変えるきっかけとなり、今も読まれ続けているロングセラーである。レイチェル・カーソンの先見の明は、現在もさらに深刻になっている様々な環境問題が証明している。
そんな彼女の最後の著書「センス・オブ・ワンダー」には、日頃から考えていた自然への深い思いがすべて述べられている。生命の輝きそのものである地球の美しさや素晴らしさを余すところなく伝える中で、自然と関わる幼い子どもたちの豊かな感性の育ちに未来を期待して残されたメッセージと言ってもよいのではないだろうか。
そしてこの「センス・オブ・ワンダー」には、幼児教育、保育者養成に携わる私の心に深く突き刺さる一節がある。 「子どもたちが出会う事実の一つ一つが、やがて知識や知恵を生み出す種だとしたら、さまざまな情緒や豊かな感受性は、この種子をはぐくむ肥沃な土壌です。幼い子ども時代はこの土壌を耕す時です。」
この豊かな地球の自然が子どもたちの豊かな感性をはぐくむ上でどんな素晴らしい先生なのか思い知らされるとともに、美しい地球を未来にも残せるよう、身近なことから子どもたちとできることは何か深く考えさせられる珠玉の一冊である。
こども学科 山岡 伊公子